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自己骨髄間葉系幹細胞を用いた肝臓再生療法

山口大学大学院医学系研究科消化器内科学 教授 高見 太郎 研究者の紹介 >

◆進行した肝硬変の患者さんから採取した骨髄液に含まれる間葉系幹細胞を培養し、それを肝動脈から投与する肝臓再生療法です。

 

 

概要

日本には約30万人の肝硬変患者が存在し、そのうち約3万人は腹水や黄疸などの症状が出現した進行した非代償性肝硬変です。非代償性肝硬変は身体障害者手帳の交付対象となる重篤な病ですが、根治療法である肝移植はドナー不足や高度の手術侵襲などのために実施可能な症例数は少ないのが現状です。したがって、簡便で身体への負担が少ない肝臓再生療法の開発が急務となります。

今回示す自己完結型肝硬変再生療法は、患者さんから採取した細胞をロボットで培養して投与する世界で初めての肝臓再生療法です。

 

 

 

 

 

技術の特徴

本治療法は、患者さんから採取した骨髄液に含まれる間葉系幹細胞をロボットで培養し、それを肝動脈から投与する世界で初めての肝臓再生療法です。具体的には、患者さんから採取した骨髄液を、無菌操作が可能な自動細胞培養ロボットシステムを用いて、骨髄液に含まれる少量の間葉系幹細胞を拡大培養します。培養した間葉系幹細胞は凍結保存され、品質・規格試験に合格した後、患者さんの肝臓に効率的に到達させるため肝動脈から投与されます。

 

 

技術の優位性

本技術の優位性として、①患者自身の骨髄由来細胞を使用するため、投与時の免疫拒絶や副作用が起こりにくいこと、②間葉系幹細胞を効率よく培養することで必要な骨髄液が少量となり、骨髄液採取時に全身麻酔を必要としない低侵襲な治療法、③細胞製剤の製造を手作業で行う際に生じる課題を自動培養ロボットシステムによって克服し、安定した品質の再生医療等製品の供給と低コスト化が可能となったこと等が挙げられます。

 

 

関連特許

1. 骨髄由来細胞の培養方法(特許第5935477号)

2. 間葉系幹細胞の培養方法、および肝機能障害用治療剤の製造方法(特許第6519727号)

3. 肝臓における線維化抑制剤(特願2018-127186)

4. 骨髄由来間葉系幹細胞の培養方法(特願2019-120099)

 

 

関連論文

1. PLoS One. 2019 Jan 23;14(1):e0210588.
 doi: 10.1371/journal.pone.0210588.

2. 参考ホームページ記事へのリンク
 肝細胞研究会 研究交流「自己完結型肝硬変再生療法」
 http://hepato.umin.jp/kouryu/kouryu62.html

3. プレスリリース記事へのリンク
 https://www.ichinai-yamaguchi.jp/news/381

 

 

外部資金事業 (一部記載)

1. やまぐち産業イノベーション促進補助金(山口県)
 「再生医療を革新する無重力細胞培養装置による高品質大量培養技術の確立」

2. やまぐち次世代産業育成チェレンジアップ事業(山口県)
 「肝臓再生療法(培養ヒト骨髄細胞肝動脈投与療法)の開発・実用化及びロボット細胞培養システム等の高機能化」

3. 再生医療研究開発拠点機能強化補助金(山口県)
 「再生医療研究開発拠点機能強化事業」

4. 再生医療実用化研究事業(2014;厚生労働省, 2015-2016;日本医療研究開発機構)
 「非代償性肝硬変患者に対する培養自己骨髄細胞を用いた低侵襲肝臓再生療法の安全性に関する研究」

5. COI-AS A-STEP 研究成果最適展開支援プログラム(科学技術振興機構)
 「肝臓再生療法のための革新的なアイソレータの開発」

6. 国家基幹研究開発推進事業・再生医療の実現化プロジェクト(2012;文部科学省),
 再生医療実現拠点ネットワーク事業・再生医療の実現化ハイウェイ(2013-2014;科学技術振興機構, 2015-2016;日本医療研究開発機構)
 「培養ヒト骨髄細胞を用いた低侵襲肝臓再生療法の開発」