◆道路トンネルのリニューアル技術であるNSM-CFRP補強工法の設計・施工方法の構築を試みています。
技術の概要
現在、社会インフラ構造物のインフラの老朽化対策・長寿命化が求められていますが、道路トンネルのリニューアル技術は確立しておらず、未だ開発段階です。
本技術は、海外の道路橋補強技術として実積の多いNSM工法をトンネル覆工コンクリートの補強技術として応用展開するものです。補強した覆工コンクリート部材の載荷実験および解析を通じて、NSM-CFRP補強工法の設計・施工方法の構築を試みています。
これまでの炭素繊維シート接着工法では補強効果が十分ではないため、CFRPによるNSM工法が確立されれば、その意義は大きいと考えられます。
技術の特徴
可撓性を有するCFCC(炭素繊維複合材ケーブル)を埋設する補強材として用い、さらに母材コンクリートに高い接着性を有するポリマーセメントモルタルを充填材として用いたNSM-CFCC工法について、アーチ構造となるトンネル覆工コンクリート部材の載荷実験(下図)、および有限差分法による解析を通じて、NSM-CFRP補強工法の設計・施工方法を構築するための検討を行っています。
これまでの実験結果により、NSM-CFCC補強したトンネル覆工コンクリートモデルでは、無補強モデルに比べて、ひび割れ発生荷重が30%ほど高くなり、著しい終局耐力の向上効果も認められています。
図 載荷実験装置
技術の優位性
本技術は、炭素繊維が耐腐食性に優れ、軽量のため現場施工しやすく、鉄筋のような腐食に起因したモルタルの脱落が生じないメリットがあります。
また、炭素繊維は世界的にも日本企業のシェアが高いため、国内施工業者は材料が入手しやすく有利な環境にあります。高強度炭素繊維複合材ケーブルによりトンネルの耐荷性能を高める本格的な補強工法は実用化されておらず、競合は少ない状況です。
関連論文(一部掲載)
- Isamu Yoshitake, Shingo Morimoto, Shinji Ueno, Hisashi Hayashi, Flexural loading test of a tunnel lining concrete model strengthened with carbon-fiber composite cables, Structures 65 (2024) doi:10.1016/j.istruc.2024.106656.
- Isamu Yoshitake, Shingo Morimoto, Shinji Ueno, Hisashi Hayashi: COMPARATIVE STUDY ON TUNNEL LINING CONCRETE STRENGTHENED WITH CARBON-FIBER COMPOSITE CABLES AND SHEETS, Proceedings of ISEC-12, (2023) doi: 10.14455/ISEC.2023.10(1).STR-13
- Isamu Yoshitake, Shingo Morimoto,Takashi Onishi, Taiga Yanagi, LOAD CAPACITY OF TUNNEL LINING CONCRETE STRENGTHENED WITH CARBON-FIBER COMPOSITE CABLE (CFCC), Proceedings of ASEA-SEC 6 9(2) (2022) doi:10.14455/ISEC.2022.9(2).STR-04
- 森本真吾, 大西崇司, 柳木大河, 吉武勇, トンネル覆工コンクリート部材の載荷実験シミュレーション, 土木学会全国大会年次学術講演会 77 (2022)
- 上野真嗣,森本真吾,吉武 勇:巻厚不足を含むトンネル覆工コンクリートのNSM-CFCC補強,コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集,24,pp.665-670,(2024).
外部資金事業(一部掲載)
- 科研費 基盤研究(C) 2021-2023年度
「道路トンネルのリニューアルに用いる覆工コンクリートのNSM-CFRP補強工法」
- 科研費 基盤研究(C) 2024-2026年度
「老朽化道路トンネルの長寿命化を図る覆工コンクリートのNSM-CFCC補強工法」