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血液脳関門モデル

山口大学医学部 神経筋難病治療学講座 教授
山口大学医学部 血液脳神経関門先進病態創薬研究講座 研究代表 竹下 幸男 研究者の紹介 >

◆医学脳研究の創薬研究が可能となるヒト由来血液脳関門(BBB)の高性能in vitro モデル。
 製薬会社と共同で新規創薬開発と上市に貢献するなど多くの実績を残し、世界中で同モデルのニーズが高まっている。

 

 

技術の概要

ヒトの脳には、他の臓器にはない「血液脳関門(BBB)」と呼ばれる、不要な物質を脳内に入れないための強固なバリアが存在し、ほとんどの治療薬も脳内に入ることができません。各製薬会社は、治療薬候補となる数十~数百種類の化合物を保持していますが、脳に関しては、BBBの通過を評価する有効なin vitro系の手段がなかったため、脳に対する新規治療薬開発が遅れていました。
今回示している血液脳関門モデル(in vitro BBB)は、化合物スクリーニングなどの脳の創薬研究開発工程を劇的に効率化することを可能にします。

 

 

 

技術の特徴

本技術は、「種差」と「臓器差」を克服したヒトの脳などの臓器別血管内皮細胞の樹立と、脳や各臓器の血管・臓器細胞モデルの作成に成功しています。このモデルの完成から数年で、世界中の製薬企業、研究所と数多くの共同研究を行い、大規模スクリーニングを行うことが可能な段階となっています。

 

 

技術の優位性

in vitro創薬モデルはヒトのモデルを構築すること自体が難しいものですが、本手法はヒト細胞モデルであり、ヒトの脳への薬剤移行評価や病態解析ができます。今回の手法は、脳関門を構成する細胞を単純に重層化しただけではなく、ヒトの脳関門の組織特異性を忠実に再現しているところが優位点と言えます。また、アルツハイマー型認知症やALSなどの疾患の創薬病態研究も行うことができ、疾患の病態解明や複数の候補薬の同定に成功しています。

 

 

関連特許

1. 血液脳関門インヴィトロモデルおよび血液脳関門インヴィトロモデルの作製方法(特許第6831119号、海外特許申請中(WO2017/179375, US2019/0144832(米)))
2. 血液神経関門インヴィトロモデルおよびその作製方法(特許第6684413号)
3. 細胞培養方法及びそれに用いられる細胞培養装置(特願2020-178448、海外特許申請中(WO2022/085773))
4. 抗IL-6受容体抗体を含有するBBB機能低下の抑制剤(特願2019-001906、海外特許申請中(WO2020/202839))

 

関連論文

1. Exploring lipophilic compounds that induce BDNF secretion in astrocytes beyond the BBB using a new multi-cultured human in vitro BBB model. M Fujisawa, Y Takeshita, S Fujikawa, K Matsuo, M Okamoto, M Tamada, F Shimizu, Y Sano, M Koga, T Kanda J Neuroimmunol. 2022 15362:577783.
2. New BBB Model Reveals That IL-6 Blockade Suppressed the BBB Disorder Preventing Onset of NMOSD. Y Takeshita, S Fujikawa, K Serizawa, M Fujisawa, K Matsuo J Nemoto, F Shimizu, Y Sano, H Tomizawa, S Miyake, R M Ransohoff, T Kanda. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021 198:e1076.
3. Blood-Nerve Barrier (BNB) Pathology in Diabetic Peripheral Neuropathy and In Vitro Human BNB Model. Y Takeshita, R Sato, T Kanda. Int J Mol Sci. 2020: 2322:62;22010062.

 

外部資金事業 (一部記載)

1. 科研費基盤研究(C)「自己免疫性神経疾患における炎症細胞浸潤を誘導する血管内皮細胞膜抗原の網羅的同定」
2. 科研費若手研究(A)「中枢神経バリアー構成細胞の特性を利用した難治性中枢神経疾患の新規治療法開発」※分担研究者
3. 山口県産業イノベーション補助金 「血液脳関門モデルのkit化事業 」 ※分担研究者
4. 製薬企業複数社とBBBモデルに関する共同研究を実施中